私の青春と共に一緒に時を刻んでくれた腕時計

その腕時計を買ってもらったのは小学2年生の頃です。

当時はどちらかというと裕福とは言えない家庭で、服や学校で使う物はほとんど姉からのおさがりばかりでした。

子どもながらに新しい物ばかり身につけている姉が羨ましいとずっと思っていました。

夏休みに旅行へ行き(旅行と言っても隣県に車で遊びに行くぐらいのものでしたが…)普段食べない美味しい物を食べたり観光地を廻ったりして楽しみました。

その時に買ってもらったのが私の名前入りの腕時計です。

○○ちゃんと名前が入った下にデジタルで時間が表示され、ピンクのベルトにはペンギンの絵が描かれていました。

お土産屋で見つけたどこにでもあるような時計でしたが、私はどうしてもその時計が欲しくて父にねだって買ってもらいました。

父もこんな時にしか買わないだろうからと買ってくれたのだと思いますが、初めておさがりではない自分の物を手に入れた私は嬉しさで泣いてしまいそうでした。

その時はまだベルトもブカブカだったので端に穴を開けてもらいつけていましたが小学校を卒業する前にはキツくなり、またデザインも子どもっぽかったので着けずに机の引き出しにずっとしまっていました。

単なるおもちゃだと思っていたのですが不思議なことにその時計は何かしら節目の時に出てきて、私に何か訴えかけるように時を刻んでいるのでした。

中学校を卒業する時や、父が単身赴任で遠くへ行ってしまった日、私が高校を卒業して家を出て行く時など。

普通に考えれば電池が切れてしまってもおかしくないのですが、見る度にキチンと正確な時間を刻んでいました。

不思議なその時計をどうしても捨てられずにいましたが、私が結婚した後からその時計は見つからなくなってしまいました。

初めて自分の物として買ってもらった腕時計。もしかしたら私のことをずっと見守ってくれていたんだろうなと思うととても嬉しく、少し寂しくも思います。

特別な思い出と私を大人にしてくる腕時計

私19歳の頃初めて訪れたブランドの免税店に立ち寄りました。

その時にすごく一目ぼれをしてしまったアクセサリー時計に出会いました。

その頃は月収以上の高価な時計で購入することすら無理でした。

ショーケースに入ったキラキラ光るその腕時計はその頃の私には豚に真珠の様な物で

いつかこの腕時計が似合う女性になりたいと妄想までしていました。

当時付き合っていた彼氏がいたのですが、貧乏カップルだったので贅沢なデートもできませんでした。

勿論その腕時計の事も話していました。

たまにお店に行ってはショーケースを眺めるだけで充分でした。

21歳の時にその彼が仕事で遠方に行く事になり4年ほど付き合ったのですが

遠距離に自身もなく一緒に付いて行く勇気もなく別れる事になりました。

喧嘩別れでもなくお互い頑張ろうと前向きなお別れでした。

最後のデートの日に朝から夜までいつも通り何をする訳でもなく家で過ごしました。

帰る際はさようならも言わずに出て行った彼氏を見送れずに寝たフリをしていました。

玄関に置かれた袋が目に入って手に取り開けてみると

それは、ずっと欲しがっていたあの腕時計でした。

泣かないと決めていたのにその瞬間涙も止まりません。

“この時計が似合う女性になって”とメッセージがありました。

それから10年以上経ちますが今でも特別な日やお祝いの時はその腕時計をします。

あの頃より大人になり

あの頃よりは似合う女性になれたと思います。

大切な思い出と一緒にこの時計と私は大人になりました。

両親にしてもらったように息子の合格祝いに腕時計を贈りました

昔私が受験だった頃に志望校に合格出来たお祝いにって両親が腕時計を買ってくれたんです。その時は本当に嬉しくちょっと大人になった気分で毎日つけて学校に行っていました。もちろん、その時の時計は今ではもう使えないけど大切に取ってあります。

月日は流れて今度は自分が贈る側に回った昨年の事。息子も念願かなって第一志望校に合格した時には自分の時以上に嬉しくて合格祝いとして腕時計を贈りました。もちろん、ネットで今どきの男子高校生が好む時計を散々吟味して高すぎず、安過ぎず、見栄えがいい物を懸命に選んで購入しました。値段的には妥当でも色んな出費も重なってて結構な痛手でしたが受験戦争に勝ち抜いた一生に一度しかない物だから私も頑張ったんです。

それから間もなく一年経ちます。入学後1週間ほどはカッターシャツの下から時計がチラチラ見えたりもしたけど、それっきり見たことがありません。先日部屋の掃除をしてて普段使わない彼のバッグの中から時計が出てきたので全く使ってないってことはないんだろうけど…。

今の子はスマホ持ち歩いてるのが当たり前になってるから腕時計なんて必要ないんだなあって贈った側としてはちょっと寂しくも感じています。でも大学生になればまた多少は変わって毎日活躍してくれるのではないかって淡い期待をしてます。

43年間使っている母に買ってもらった腕時計

中学二年生になる春のことでした。今私は47歳ですので43年前のことです。その当時ダイバーズウォッチという腕時計が流行していて、どうしても欲しくて母におねだりしました。我が家は個人経営の呉服の小売店をしており、決して余裕があったとは言えない状況でしたが、国産の文字盤が黒いダイバーウオッチを買ってもらうことができました。

勉強が好きだった中学生・高校生時代、初めての女の子とのデートのとき、軽音楽部の活動に明け暮れた大学生時代、納期に追われる夢をしばしば見た営業マン時代、転職して地元の工場現場で働くようになってから精力的に行ってきた地域活動をしているとき…。常に私は左手首の黒いダイバーウォッチで時刻を確認してきました。母は今になって言います。「あの時は高いなあと思って買ってあげたけど、これだけ永く使ってくれているから買ってあげてよかったよ」と。

去年、まだまだ私の歴史を刻んで欲しいという思いでメーカーにオーバーホールに出しました。この時計を持ったことで、自動車やオートバイ、楽器などもすぐに新しいものを買わず、メンテナンスや修理を繰り返して永く使うようになりました。時には新しい製品を買ったほうが安いこともありました。しかし、モノを大切にし永く使うことは、私を形成している私の歴史と共に過ごしていることだと感じます。この黒い文字盤の腕時計は私の心を確実に豊かにしてくれています。