43年間使っている母に買ってもらった腕時計

中学二年生になる春のことでした。今私は47歳ですので43年前のことです。その当時ダイバーズウォッチという腕時計が流行していて、どうしても欲しくて母におねだりしました。我が家は個人経営の呉服の小売店をしており、決して余裕があったとは言えない状況でしたが、国産の文字盤が黒いダイバーウオッチを買ってもらうことができました。

勉強が好きだった中学生・高校生時代、初めての女の子とのデートのとき、軽音楽部の活動に明け暮れた大学生時代、納期に追われる夢をしばしば見た営業マン時代、転職して地元の工場現場で働くようになってから精力的に行ってきた地域活動をしているとき…。常に私は左手首の黒いダイバーウォッチで時刻を確認してきました。母は今になって言います。「あの時は高いなあと思って買ってあげたけど、これだけ永く使ってくれているから買ってあげてよかったよ」と。

去年、まだまだ私の歴史を刻んで欲しいという思いでメーカーにオーバーホールに出しました。この時計を持ったことで、自動車やオートバイ、楽器などもすぐに新しいものを買わず、メンテナンスや修理を繰り返して永く使うようになりました。時には新しい製品を買ったほうが安いこともありました。しかし、モノを大切にし永く使うことは、私を形成している私の歴史と共に過ごしていることだと感じます。この黒い文字盤の腕時計は私の心を確実に豊かにしてくれています。